第4回「彼女から高いプレゼントをさりげなくねだられた問題」
男女交際を進めていく上で、お金の問題は重要かつ微妙です。お金を使えば彼女の愛を得られるわけではありませんが、「愛があればお金なんて関係ない!」とも言い切れません。また、カッコつけて気前よく振る舞いたいのは山々でも、心の底から「彼女のためならお金なんて惜しくない」と思うのは困難だし、懐の事情もあります。
来月にクリスマスを控えたこの時期だからこそ、愛とお金の問題について、しっかり考えておきたいところ。たとえば、彼女がファッション雑誌のクリスマス特集のページをめくりながら、
「うわー、このバッグいいなあー!」
と叫んだとしましょう。見れば、けっこうなお値段です。もしかしたら彼女は、さりげなくおねだりしているのかもしれません。そういうつもりはぜんぜんないかもしれません。いずれにせよ、どう反応するかによって、いろんなことが問われてしまう厳しい状況です。
今回は、彼女へのプレゼントにまつわる「大人のお金力」について考えてみましょう。

買うことになる事態を無難に避けるには?
彼女が「いいなあー」と言っている小物なりアクセサリーなりが、何十万円もする高額な商品の場合は話が簡単。チラッと覗き込んで、
「ひえー、そんなにするのー。いったい誰が買うんだろうね」
とか何とか言っておけばいいだけです。
難しいのは、5万~7万円ぐらいの「頑張れば買えなくはないけど、普通のサラリーマンの自分がそんな高いものをプレゼントするのは分不相応というか、ぶっちゃけ、そこまでは出したくないというか……」という値段のとき。なまじ早めに手を打っておこうとして、
「買ってあげたいところだけど、僕には無理だなあ。不甲斐なくてゴメンね……」
いきなりそんなふうに謝っても、無意味にケチ臭い印象を与えるだけだし、しかも「私、買ってくれなんて言ってないよ!」と彼女を怒らせてしまうでしょう。
ここは、あえて火中の栗を拾いにいくのがオススメ。雑誌を見ている彼女に、
「もしかして欲しいの?」
そう聞いてしまいましょう。彼女としては、本当は欲しかったとしても、「高いものをねだるような女」と思われたくはない気持ちもあるので、「えー、そういうわけじゃないけど」と言葉を濁す可能性は大。そこでさらに、
「そういえば、もうすぐクリスマスだね。プレゼントは何がいい?」
という話に持っていけば、もう少し安めのラインを前提とした話し合いになるでしょう。ケチと思われることも彼女に不満が残ることもなく、出費を抑えることができます。
ただし、彼女が「欲しい欲しい! 買ってくれるの?」と平気で答えるタイプだった場合は、この作戦は使えません。そう言われたら、
「そうだね。宝くじに当たったらね」
と軽く流しましょう。当然、ケチと思われるリスクはありますが、ここが大人の踏ん張りどころ。無理にイイ顔をしようとすると、これから先も見栄を張り続けざるを得ない羽目になり、次々と不幸の連鎖に見舞われます。
買ってあげるときも慎重な対応が必要
もちろん「奮発して買ってあげてもいいかな」と思ったとしても、それはそれでひとつの判断です。その場合も、買わない場合以上に慎重な対応が必要。うっかり恩着せがましい態度を取るなどして、大枚はたいた上に彼女からの評価が下がったら目も当てられません。
買ってあげる心積もりがあるときは、雑誌を見ている彼女に対して、まずは自然な口調で、
「へえー、○○ちゃんに似合いそうだね」
と言ってしまいましょう。彼女が「えっ、もしかして…」と期待をふくらませたところで、
「そういえば、もうすぐクリスマスだけど、プレゼント、これじゃダメ?」
そう控えめに打診すれば、激しく感激してくれること請け合い。おそらく彼女は、
「えー、こんな高いものいいよー」
などと遠慮する素振りを見せるでしょうが、惑わされてはいけません。「えっ、そうなの?」と宣言を撤回するなんてもってのほか。
「いやまあ、いつもお世話になってるし、○○ちゃんがこれを持っているところも見たいし」
そんなふうに、あくまで落ち着いた口調で押し切りましょう。緊張して「このぐらい大丈夫だよ」とか「どうってことないって」などと言ってしまいがちですが、太っ腹ぶればぶるほど、むしろケチ臭さが強調されてしまいます。
いざ渡すときも、くれぐれも油断は禁物。彼女が感謝してくれている様子に気がゆるんで、
「○○ちゃんが、こんなに喜んでくれるんだから、5万8000円ぐらい安いもんだよ」
といった値段を意識した発言をするのは絶対にタブーです。「よく似合うね。よかった」などと言いながら、「贈った側の喜び」にひたっている様子を示しましょう。
せっかくの出費を生かすも殺すも、ちょっとしたやせ我慢ができるかどうかにかかっています。得意気な顔をしたくなるなどの目先の誘惑に負けず、最大限の効果や深い満足感を求めるのが、大人の貪欲さに他なりません。
石原壮一郎
1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、93年に『大人養成講座』でコラムニストとしてデビュー。独特の筆致とスタンスが話題を呼び、以来、日本の大人シーンを牽引し続けている。
主な著書に、『大人力検定』『大人力検定DX』(文春文庫PLUS)、『父親力検定』(岩崎書店)、『30女という病』(講談社)などがある。本連載では、「お金」という大人が避けて通れない難問に真っ向から挑み、このややこしい大人社会を生き抜くためのお金力を養うための画期的なヒントを浮かび上がらせていく予定。
カラスヤサトシ
1973年大阪府生まれ。会社員の傍ら漫画を執筆、95年にデビュー。03年から「月刊アフタヌーン」の読者ページの欄外に、身の回りで起こったおかしな出来事や思い出をエッセイ風に紹介した四コマ漫画・「愛読者ボイス選手権 特別版」を掲載、その独特の作風が反響を呼び、06年には連載ををまとめた単行本『カラスヤサトシ』(講談社)を出版(現在3巻まで発行)。その後『萌道(もえどう)』(竹書房)を出版。
本連載では、会社員生活とフリー生活で培った金銭感覚をもとに、独自の視点でお金にまつわる諸問題に挑む予定。


