第28回 「「愛」である神の属性(一)恩恵」
●贈与としての恩恵
愛であるという神の本質から導き出される神の属性には、恩恵、義と憐れみ、信実、知恵がある。ここで特に重要なのは、恩恵である。神はそのひとり子であるイエス・キリストを、人間を救済するためにこの世に派遣した。そして、イエスは十字架にかけられて死んだ。この恩恵に対して、神は人間からの見返りを何も要求していない。すなわち、恩恵は神による見返りを求めない贈与なのである。
そこで、「受けるよりも与えること」が重要であるというキリスト教倫理が生まれる。人間の生は、他者のために存在するのである。もっともカトリック神学においては、恩恵は愛ではなく、超自然的な神のカリスマ(賜物)としてとらえられている。
〈愛という本質の系列に属するものとして恩恵があげられるが、恩恵は愛するものに対する無条件な贈与という意味での愛である。この場合重要なのは、恩恵は罪人の救済に関するだけの概念ではないということである。和解はもちろん創造も恩恵の業なのであり、完成も恩恵の業なのである。カトリック教会では恩恵を愛としてではなく、超自然的な賜物として理解する傾向がある。そのかぎり恩恵という概念は属性論では故意に避けられる傾向があり、恩恵の代わりに慈愛とか憐れみがあらわれる。これは恩恵を実体概念としてとる結果であ(る)〉(前掲書101~102頁)
恩恵は実体概念ではない。イエス・キリストが具体的な人々との交わりの中でどのような行動をとったかという関係に、神の一方的贈与である恩恵が表れているのだ。ここから「関係の類比」の手法によって、われわれは恩恵を理解することができる。
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