佐藤優 : キリスト教神学概論

第27回 「神論はなぜ難しいか」

●神論はなぜ難しいか

 キリスト教神学の要はキリスト論である。しかし、キリスト論は、神論を理解しないとわからない構成になっている。過去数回の連載でおわかりのように神論は極めて難解である。それは、人間と神が隔絶した存在であり、限界がある人間の知識では、神を認識することができないからだ。中世以降、何度も試みられた「神の存在」に関する証明は、すべて誤っている。それは、限界がある人間の知性で、「神の存在」を証明するという設問自体が間違えているからだ。また、人間によって存在すると考えられるような神は、人間の頭の中で組み立てられた偶像である。従って、「神の存在」証明は、人間を偶像崇拝に導いてしまう危険性がある。
 重要なことは、神についてわれわれが論じることではなく、神がわれわれについて何を述べようとしているかについて耳を傾けることだ。この神の声が超越性なのである。
 神論において、これまでの連載で、神が主であることを始原とし、そこから神の愛を導き出した。そして、神が主であることの属性、神が愛であることの属性について、現在、説明を進めている。率直に言って、これはプロテスタント・スコラ主義の伝統を引く、かなり些末で無味乾燥な議論だ。しかし、それを通じて、神学者たちが超越性について語りたかったのだという視座から見れば、神論をめぐる議論に命がはいる。

 

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(2008年12月 1日更新)
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佐藤優
写真提供=共同通信社
【著者略歴】
1960年生。起訴休職外務事務官・作家。同志社大学神学部卒業。同大学院神学研究科終了。緒方純雄教授に師事し、組織神学を学ぶ。1985年に外務省入省。在英日本国大使館、ロシア連邦日本大使館などを経て、外務省本省国際情報局分析第一課に勤務。外交官として勤務するかたわら、モスクワ国立大学哲学部客員講師(神学・宗教哲学)、東京大学教養学部非常勤講師(ユーラシア地域変動論)を務める。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2005年2月、執行猶予つき有罪判決を受け、現在上告中。『自壊する帝国』(新潮社)で第38回大宅壮一ノンフィクション賞、並びに第5回新潮ドキュメント賞、『国家の罠』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞を受賞。『私のマルクス』(文藝春秋)、『獄中記』(岩波書店)など著書多数。

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