第16回 「参考書として何を読めばよいか」
●参考書として何を読めばよいか
本連載は、教義学(教理学)を中心に行う。いままでの説明からわかるように、キリスト教神学の中心は教義学だからだ。読者から、「何を読めばキリスト教神学がわかるか、基本的文献を紹介して欲しい」という質問がよく寄せられるので、神学書を三冊紹介しておく。
1.佐藤敏夫『キリスト教神学概論』新教出版社、1994年
現在、簡単に入手できる日本のプロテスタント神学者が書いた教義学の入門書は本書だけである。高校の倫理社会程度の基礎知識があれば、読みこなすことができる。総合大学の神学部や教派神学校で牧師になる神学生が身につけなくてはならない最低限の知識が本書に盛り込まれている。
少し物足りないと感じる読者は、ホルスト・ゲオルク・ペールマン[蓮見和男訳]『現代教義学総説 新版』(新教出版社、2008年)を参照しながら、本書を読み進めるとよい。ペールマンの本は、「総説」という概論のような表題になっているが、かなり高度な各論的内容をともなっている。総合大学大学院の神学研究科で、組織神学を専攻する学生にちょうどよいレベルである。
一般論として、基礎的な神学概念を正確におさえないまま、高度な神学書に取り組んでも、内容が理解できない、あるいは頓珍漢な解釈をすることになるだけで、時間の無駄だ。まずは、基礎力をつけることに目標を限定すべきである。
2.エミール・ブルンナー『教義学』 教文館
①エミール・ブルンナー[熊澤義宣・芳賀力訳]「教義学Ⅰ 神についての教説」『ブルンナー著作集 第2巻』1997年
②エミール・ブルンナー[佐藤敏夫訳]「教義学Ⅱ 創造と救贖についての教説の教説」『ブルンナー著作集 第3巻』1997年
③エミール・ブルンナー[近藤勝彦・大村修文訳]「教義学Ⅲ 教会・信仰・完成についての教説・上」『ブルンナー著作集 第4巻』1998年
④エミール・ブルンナー[大村修文訳]「教義学Ⅲ 教会・信仰・完成についての教説・下」『ブルンナー著作集 第5巻』1998年
総合大学の神学部で行われる教義学の授業をほぼ再現したテキストだ。改革派神学の論点をもらさずに取り扱っている。構成のバランスもよくとれている。ブルンナーの教育者としての配慮がよく現れた作品である。それならば、本書に即して、本連載を行えばよいのではないかという声が読者から聞こえてきそうであるが、そうはいかない。啓示に対する理解、創造の秩序、自然観、キリスト論、社会倫理など、教義学のほとんどの分野について、筆者はブルンナーの見解に同意していないからである。
筆者の基本的理解は、カール・バルトの延長線上にある。従って、バルトとブルンナーの間の神学論争(政治的論争は別である)について、筆者はバルトの側に立つ。これは、基本的立場の設定、すなわち啓示の性格をどのようにとらえるかというところからでてくる問題なので、調停することができないのである。
本来ならば、カール・バルトの『教会教義学』を参照して欲しいと述べたいのだが、大部でもあり、また、議論があちこち横道にそれて、全体像を理解することが難しい神学書である。『教会教義学』に取り組む前に、何冊か概説書か解説書を読んでおく必要がある。オットー・ヴェーバーのこの本は、入手が難しいが、インターネットの古本屋を見ていれば、ときどき売りにでている。東京近辺に在住している読者ならば国立国会図書館、都立図書館、渋谷区立図書館、京都近辺に在住している読者ならば同志社大学図書館で閲覧することができる。
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