佐藤優 : キリスト教神学概論

第12回 「神学の区分(一)聖書神学」

●神学の区分

キリスト教神学は、間口が広い。また、カトリック、プロテスタント、正教では、神学の構成や区分が異なる。ここで扱うのは、基本的にプロテスタント神学であるが、カトリックと正教についても、必要に応じて言及するので、この連載を最後まで読んでいただけば、キリスト教に関する基本的な知識が身につく。
 基本的な知識とは、ヨーロッパやアメリカの標準的知識人と会話をする際に、必要かつ十分なキリスト教に関する知識ということである。
 さて、神学は間口がひじょうに広い学問である。大きく分けて、以下の四つに区分される。

・聖書神学
・歴史神学
・組織神学
・実践神学

 

●聖書神学

聖書神学とは、文字通り、聖書に関する研究だ。聖書神学を専攻すると語学と文献学の知識が身につく。
 聖書神学は、旧約聖書神学と新約聖書神学に分かれる。
 更に聖書神学の研究に必要な補助学がある。まず、古典語学である。ヘブライ語、アラム語、コイネー(共通)・ギリシア語の基礎知識は、聖書神学を学ぶ上で不可欠である。コイネー・ギリシア語とは、聖書がまとめられた1世紀半ばから、2世紀中葉頃に通用していたギリシア語で、プラトンやアリストテレスが用いていた古典ギリシア語と比較すると、文法が簡略化され、言葉の意味が少し変容している。新約聖書と「セプトゥアギンタ(七十人訳)」と言われる旧約聖書のギリシア語訳は、コイネー・ギリシア語で書かれている。
 ちなみに古典ギリシア語の知識があれば、新約聖書用のギリシア語辞典とコイネー・ギリシア語の文法書を参照して、新約聖書と「セプトゥアギンタ」については読み進めることができる。これに対して、コイネー・ギリシア語の知識があっても、プラトンやアリストテレスの著作を読み解くことは難しい。
 ちなみにイエスは、ギリシア語を話さなかった。イエスは、当時、パレスチナのユダヤ人が話したアラム語を常用していたものと見られている。
 現在のイスラエル国家は、旧約聖書のヘブライ語をよみがえらせて国語にした。従来、言語学の常識では、日常語として流通しなくなった宗教語を生きた言語によみがえらせることはできないと見られていたが、この通説をイスラエルは覆した。従って、旧約聖書を読むためにヘブライ語を習得すれば、現在のイスラエルの日常語としても基本的に通用するので、実用性がある。

 

 

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(2008年7月17日更新)
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佐藤優
写真提供=共同通信社
【著者略歴】
1960年生。起訴休職外務事務官・作家。同志社大学神学部卒業。同大学院神学研究科終了。緒方純雄教授に師事し、組織神学を学ぶ。1985年に外務省入省。在英日本国大使館、ロシア連邦日本大使館などを経て、外務省本省国際情報局分析第一課に勤務。外交官として勤務するかたわら、モスクワ国立大学哲学部客員講師(神学・宗教哲学)、東京大学教養学部非常勤講師(ユーラシア地域変動論)を務める。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2005年2月、執行猶予つき有罪判決を受け、現在上告中。『自壊する帝国』(新潮社)で第38回大宅壮一ノンフィクション賞、並びに第5回新潮ドキュメント賞、『国家の罠』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞を受賞。『私のマルクス』(文藝春秋)、『獄中記』(岩波書店)など著書多数。

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